ここは私が原型を担当した特撮リボルテックシリーズの紹介のページです。
本日の制作状況のページで紹介した文章を再録してあります。

<空の大怪獣ラドン>

 今年も残り少なくなってまいりましたがいかがお過ごしでしょうか?今回は前回に引き続き、12月1日に発売となった特撮リボルテック・ラドンの紹介から。
 映画『空の大怪獣ラドン』は言えば初期の東宝特撮の中でも完成度が高く、ラストシーンでは溶かした鉄で溶岩を表現したりと東宝特撮黄金期の恩恵を受け、非常に豪華な撮影手法が取られました。
 今回特撮リボルテックでモチーフにした福岡のシーンでも非常に緻密に作り込まれたセットを使い、CGなど無かった時代に、ラドンの引き起こす強風の威力を説得力のある表現で映像化されています。
本日の製作状況1
 さて、商品内容についてはもう方々でわかり易く紹介されているので、ここでは主に開発に関わる話をしたいと思います。
 今回は翼の部分に軟質素材を使う事は早い段階で決まっており、アイディア出しの段階でハネの部分がラバースカルピー(固めても柔らかい粘土素材)とアルミ線で商品とほぼ同じ構造を持つラフを作り、それに過去に作ったビルのストラクチャーから適当な大きさの物を選んでプレゼンテーションを行いました。
 そのプレゼンテーションの場に、普段はそう言う事は無いのですが、海洋堂の幹部であるS氏がいらっしゃり、特撮リボルテックにかける意気込みや、私が外部の人間と言う事で海洋堂には無い発想を期待しているというような旨の訓示があり、今回のラドンに関しては造形重視で、可動はおまけ程度にして新しい方向性を模索したいというような事を言っていたような気がするのですが、話をしながら前述のハネが動くラフをいじくっている内に「まぁこれでいいか〜」となって、結局今の形になりました。やはりラフでも現物があった方が話がスムーズに進むようですね。
 その後S氏はラドンの写真を見つつ、ここはこうしたい、ここはこういう風にした方が良いとかなり熱心に指示を出しておりまして、原型の途中監修の時にも直接電話をかけて来て「写真見たけどちょっと心配」とダメだしをしたり、商品仕様について改良のアイディアを出したりと色々あって『ああ、本当に怪獣が好きなんだなぁ』と感じさせられました。
本日の製作状況2
 ギミックを仕込んだビルと言うアイディアはこの製作が正式に依頼される前から海洋堂側の開発担当者との会話の中で出て来ており、「ビルがリボで動くって言うのはどうですかねー?」「いいっすよ」てな感じで割とあっさり決まっていました。
本日の製作状況3
 まぁ製品化の過程で手直しされ、実際に製品化されたビルにはリボジョイントは使われなかったのですが、内側のボールジョイントの部分は原型の段階では4ミリのリボ球が使われていました。
本日の製作状況4
 ビルは劇中、福岡でラドンが舞い降りるビルの一部を再現してあります。サイズの制約があるため、完全には一致しませんが、ビル上部の瓦礫部分を外し、ラドンを立たせると『大ゴジラ図鑑2(ホビージャパン刊)』の24ページの写真のスチールが再現できるようになっています。
本日の製作状況5
 翼の付け根の機構については始めは別の形だったのですが、原型が1度完成した後、レジンに置き換えての検討段階で製品管理の面からリテイクが入ったため、現在の形になりました。特撮リボルテックのギャオス式の接続方法を使う案も提示されていたのですが、ラドンの場合は足まで翼の皮膜がつながっているデザインなので、もう少し何とかならん物かと現在の挟み込み式を考案しました。
本日の製作状況6
 デザイン的に脚が細いのと、映画で使われたスーツの足の形状はかかとがベタっとついた靴を履いてるような形状なので、若干アレンジしてかかとが浮いてる様に造形しているため、足だけでの自立は元から考えておらず、翼も使って3点〜4点接地で立たせる仕様になっています。
 また、翼に付いている爪は最初に原型を納めた時点では無可動だったのですが、リテイクの際にこちらの独断で仕込んで、それが採用されたものでして、結果としては表情付けがし易くなったのではないかと思います。
それから、ラドンは劇中ほとんど背中のディティールを確認できるようなカットが存在せず、メイキングの写真等でもそれは同じです。わずかに存在するスーツ造形途中の写真では、薄くしなやかに動く翼にする為、裏面には縦横に梁のような構造材が浮き出ており、それが生物感を損ねているという判断から劇中では背中ははっきりと視認できない様に編集されたのではないかと推察します。ですから造形するに当たり、当時の特撮マンの気持ちに心を馳せて、あえて梁のようなディティールは入れませんでした。
 当然背中の配色もよくわからないのですが、残っている小サイズの飛び用ラドンのカラー写真では中心線付近に黄色とその周囲にグリーンの割と派手な塗装がされていました。昔出ていたバンダイのソフビもメタリックでこんな風な塗装をされていた気もします。1/1スーツの塗装はよくわからないのですが、特撮リボの原型は造っても塗装に関しては関与していないので、後から考えると意見しておけば良かったかなとも思います。
 
 以上、『特撮リボルテック・ラドン』の紹介でした。今後また自分が造形を担当した物がリリースされましたら、また色々と書こうかと思いますのでご期待ください。たぶん夏くらいになると思います。

<クイーンエイリアン>

 昨年の今頃から特撮リボルテックに関わらせてもらって、モゲラのオマケとしてマーカライトファープが出たりしていたのですが、ようやく本体の原型を担当した物が12月1日に発売になりますよ、しかも2体いっぺんに。
 今回は2体の内の1体のクイーンエイリアン(以下、クイーン)のサンプルを頂きましたので、ご紹介したいと思います。
本日の製作状況1
 すでにネットの方では方々で画像が出回っているようですので、細かいスペック等はそちらを参照して頂くとして、先行して11月1日に発売されたエイリアンウォーリア(以下、ウォーリア)とのツーショットです。
 両方とも映画『エイリアン2』に登場したエイリアンのバリエーションで、塗装や成型色も統一されたイメージで仕上げられています。
 ウォーリアについては確かクイーンの納品時にはまだ企画されてなくて、開発担当の人と「やりたいですね〜」と話をしていたのですが、気づけばいつの間にか原型の複製が出来ており、クイーンに先立って発売されているので、この辺りの瞬発力はちょっと驚かされました。これはやはり特撮リボルテック第1弾のエイリアン(ビッグチャップ)が好調だった為でしょうか?
 無論、品質は前回のエイリアン(ビッグチャップ)の経験から更に向上しており、可動フィギュアとしてのプレバリューはかなり高い物となっています。これは後にクイーンの所でも触れますが、本体の素材とリボジョイントの性質の関係から、かなりいじるのに最適なバランスになっていると思います。
 バランスをとれば支えが無くても自立し、ディティールの密度も程よく、結構お気に入りだったりします。
 さて本題のクイーンに話を進めます。
本日の製作状況2
 写真のボックスについてはサンプル品で、商品版にはこれに帯が付く事になると思います。
 前述のようにクイーン制作時にはウォーリアは存在しなかったので、ウォーリアとのサイズの差は意識しようが無かったのですが、とりあえずエイリアン(ビッグチャップ)よりも大きく見えて、かつリボルテックシリーズの箱のサイズに収まるようにとの事だったのですが箱の厚みは通常より増してしまいました。
 サイズに関しては海洋堂内でも意見が色々あり、また、組み込む関節の規格が決まっている為、結構すったもんだして今の大きさに落ち着きました。
 写真を見せれば『小っさ!!』と言われ、大きくした途中の物を持って行くと上の方から『でかい』と言われ、造っていくウチに『どう考えてもでかいぞ!!これは!!!』と気づいて、年末にも関わらず開発部の担当者に連絡を取って一部仕様変更の上、正月の間に縮小化…やはり商業原型はサイズ調整が一番大変ですね。
 散々もまれたおかげでその後の仕事ではサイズに関するトラブルはありませんが、この時はあまり商業原型を手がけた経験が無かったので大変でした。
 サイズはもっと大きい方が良いと言う意見もあるとは思いますが、使われている素材の関係であまり重くするとしなって足腰が立たなくなり、関節のクリックも死んでしまうので難しい所です。ポーズが取れない可動フィギュアではしょうがないですからね。
本日の製作状況3
 他の特撮リボルテック同様前面が開くようになっており、解説とウインドウボックス仕様で商品が見えるようになっています。
 今回はサイズが大きいのでオマケの小フィギュア等は無し。展示用の床&支柱が付属しています。
 支柱の先端はリボジョイントになっており、胸の所に差し込むようになっていますが、すこしきつめなので本体の方をドライヤー等で暖めてから差し込むと良いかと思います。
本日の製作状況4
 正面から。胸から生えた小さな手がラブリーです。
 サイズに関しては、ここに可動が仕込める最小の大きさと言うのを1つの目安にして造りました。
 映画のメイキング写真等を見るとこの小さな手はウォーリアの手のバリエーションの1つと共通のようで、クイーンとウォーリアのプロップのサイズの差が判ります。
本日の製作状況5
 背中に生える刺はリボジョイントでそれぞれ可動します。
 破損対策の為か柔らかい素材で出来ており、箱に収める段階でクセが付いている事もあるようなので、ドライヤーやお湯で暖めて矯正してあげましょう。(その際には火傷と加熱しすぎて溶かさないように注意してね。)
 シッポは他のエイリアンと同じで金属線が内蔵されており、自由にポーズが付けられます。劇中ではクイーン最強の武器だったりします。
本日の製作状況6
 特撮リボルテックシリーズの他の原型ではまず不可動の状態で造形し、可動は後から別の人が仕込むという方式で制作されている物も多いようですが、私が担当した物に関しては可動も一緒に造り込んでおり、基本的に可動機構も自分で考えて仕込んでいます。
 今回のクイーンにおいて珍しい可動部として、首の後ろ側がフタのようになっている部分があります。
本日の製作状況7
本日の製作状況8
 これは首を上下させ、頭部の角度を変える時に結構隙間が目立つので、首の後ろ側を別パーツ化してスライドさせる事で見た目が悪くなるのを防ぐ事を目的としていますが、いかがでしょうか?
本日の製作状況8
 こうして並べて写真を撮ってみるともう2〜3匹ウォーリアが欲しくなりますね〜。
 クイーンの造形に関して、一応かつて海洋堂からリリースされていた1/10クイーンのレジン版を貸してもらったりはしたのですが、造形において他人の造った造形物は信用するなと言うのが今までの経験から得た教訓でありまして、ディティールのリサーチは自分で資料を集めた物が中心となっています。
 ですが、和物の特撮キャラクターに比べ、国内で手に入る資料がかなり少ないので細部のディティールの解析にはかなり苦労しました。
 そしてDVDなど無かった時代に造られた1/10クイーンが思いの外よく出来ていたのには驚かされました。
 
 さて、12月1日には空の大怪獣ラドンも発売になります。そちらの原型も担当しており、サンプルが手に入りましたらまた掲載したいと思います。
 そして今はまだ発表されていませんが、これら以外にも既に何点か原型を納めており、中には今回のクイーン同様規格外のブツもありますのでお楽しみに。
 シリーズは未だ安定期に入ったとは言えない状況ではありますが、シリーズが長く続けばそれだけマイナーキャラや、今は様々な事情で出せないキャラも出せる可能性が高まりますので応援宜しくお願い致します。
 それではまた。
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