1/200・伊ー507 組み立て講座

伊−507組み立て講座1
 はじめに、このキットは『1/200・伊−507』という商品名の通り、200分の1スケールで、全長は55センチに及ぶ大型キットです。1/200というスケールはニチモの伊−19潜やUボートのプラモデルと同じスケールで、ニチモは大和や駆逐艦等もこのスケールで販売しており、その大きさと現代でも通用するディティールからロングセラーとなっているスケールです。
 国内で大型キットと言えば1/350の方がメジャーですが、潜水艦だと30センチくらいなので迫力に欠けますし、何よりピットロードからこのスケールの完成品が販売された等の理由から1/200スケールでの制作を決定した次第です。
 さて、キットの制作に当たりまず行っておかなければならないのは、パーツチェックです。なにせパーツ数が多く、細かいパーツも多い為、この作業をしっかり行って全体の構成を把握しておきましょう。

1/200・伊−507 パーツ一覧のページへ

 次にキット表面に付着している離型剤の除去を行います。
伊−507組み立て講座2
 まずパーツを食器洗い用の中性洗剤を水に溶いた液に1晩浸けます。(この工程は表面の油分を浸け置きで溶かすのが目的ですが、これだけでは離型剤は落ちません。)
伊−507組み立て講座3
伊−507組み立て講座4
 レジンキャストキットの場合、離型剤の除去は基本的には中性洗剤とクレンザーを混ぜた物を古歯ブラシに付け、ごしごし磨きます。
伊−507組み立て講座5
このキットはフッ素系離型剤を使用しているので、比較的に除去はかんたんなはずです。G-tempestでは離型剤はフッ素系のハイリムーバー94とUB-108を使用しています。よってMウォッシュなどの油分を化学的に分解する離型剤落としの中にはフッ素系離型剤には効果が十分ではない物もあるようなので、結果的にオーソドックスな方法が1番効果的だと言えます。また、フッ素系離型剤は比較的おちやすいと言えども洗い残しがあると後々厄介なのでしっかり洗いましょう。また、細かいパーツが非常に多いので、洗浄時の紛失・破損には注意してください。洗いにくい奥まった箇所や細かいパーツについては筆を使って洗ったりすると良いでしょう。十分磨いたら水(あるいはお湯)で濯いで洗剤を落とし、十分乾燥させます。
伊−507組み立て講座6
 とりあえずこのキットを組むにあたって1番厄介なのは、下部船体と上部船体のすり合わせです。 これさえクリアしてしまえば、後は割と簡単に組む事が出来ます。
 レジンキャストという素材は液状の2種の薬剤を混合することにより化学反応を起こして硬化するわけですが、 その際、内部の溶剤分が揮発し、若干収縮します。その影響は体積の大きいパーツ程大きく、このキットでは船体下部パーツがもっとも縮むことになります。 しかも、硬化時の反応熱によってシリコン型が膨張し、それぞれのパーツが微妙に異なったサイズになるのです。また、成形を繰り返す事によって、シリコン型自体が変形して来たりもします。そのため、どうしても硬化後に調整する必要が出てきます。
 方法としては、船体上部パーツが船体下部パーツより大きい場合は、船体上部パーツのつなぎ目を少しずつ削って船体下部パーツにはまるように調整して行きます。上の写真の番号がついている箇所が削る事が出来る箇所です。
 @〜Dのうち、B・Dは可動部があるのであまり削る事は出来ません。 Cは以前のバージョンなら大きく削る事も可能でしたが、今回は格納庫周りにディティールが集中しているので、削るにも限界があります。
伊−507組み立て講座7
 @は船体下部パーツの艦首の先が当たる部分を削り込むのですが、 形状的に艦首パーツがフィットする範囲しか削れないので、結果としてAを中心に削って調整する事になります。
 横幅に関しては基本的に入るはずですが、前述の通り、船体上部パーツに個体差があるため、 入らない物もあります。そういう場合は、船体下部パーツの横の部分を削って調整して下さい。リューターを使うと簡単です。
 ちなみに経験から言うと、成型してすぐの物は大体上部パーツの方が大きいのですが、3ヶ月から半年くらいで ある程度収縮が進むと今度は上部パーツの方が小さくなるので、どうしてもすぐに作りたいと言う人以外はある程度収縮が収まるまで放置しておく方がいいかも知れません。
伊−507組み立て講座8
 ここで削り作業に使う道具の紹介。
 上からワイヤーブラシ(ヤスリの掃除に使用)、タミヤのクラフトヤスリ(平型)2種、 ダイヤモンドヤスリ(平型、100円ショップで購入可)。船体すり合わせの作業は基本的にダイヤモンドヤスリだけで行えます(適宜アートナイフ等使用)。 クラフトヤスリはダイヤモンドヤスリ程ではありませんが削り易く、表面がきれいに仕上がります。必須ではありませんが、 あると便利です。
伊−507組み立て講座9
 右2つは紙ヤスリをプラ板に貼ったもの。左はタイラーというプラ製の台に紙ヤスリがはられた商品。 この他、曲面には通常の紙ヤスリやスポンジヤスリを使います。
 この他、船体下部パーツを削る場合にはリューターがあると便利です。
 これとは逆に船体上部パーツのほうが船体下部パーツよりも小さい場合もあります。その場合は出来た隙間にエポキシパテなどを詰めて埋める必要があります。
伊−507組み立て講座10
 さて、ここからは個別のパーツの成形に入ります。
 画像はF−Dパーツ、格納庫のN式を載せている台になります。N式を伊−507から発進させる際はこの台ごと後部のレールに沿ってせり上がりながら後退します。
 矢印の部分が成型時の型ずれによって、厚みが均一では無くなっています。これは成型を進めて行った結果、型のゆがみが増大し、型ずれが起き易い状態になった為です。
 矢印の部分は組み立ててしまえば見えなく見えなくなる部分なので、そう神経質になる必要は無いのですが、一応成形しておきます。
伊−507組み立て講座11
 さらにこの矢印の部分に結構大きめな気泡が有ります。でもこれくらいは実は簡単に処理できます。
伊−507組み立て講座12
 こういった複数の面に接した気泡の場合、ヤスリがけし易い面のみをナイフで開口します。
伊−507組み立て講座13
 ここで気泡埋めに使うのはアルテコの瞬間接着パテです。このパテは専用の粉末を瞬間接着剤に類似した成分の溶液で解いて硬化させるもので、瞬間接着パテといってもそこまで早く硬化はしません。
 瞬間接着剤用の硬化促進スプレーが使用可能で、併用すればかなり早く硬化させる事が可能です。
 ナイフで削った感じはサクサクとした感じで粘りはなく、強度が低いので細かい彫刻には向いていないのですが、裏を返せば非常に削りやすと言う事です。
 まとめると、硬化が比較的早く切削性が高いので、スピーディーに作業を進めたい場合にはうってつけというわけです。ただ前述の通り、粘りや強度面では弱いので、力がかかる部分にはエポキシパテを使います。
伊−507組み立て講座14
 使い方は粉末に溶液を混ぜるだけ。説明書には分量が書いてありますが、別にその通りに使う必要は無く、大体エポキシ接着剤くらいの粘度で盛りつけてやります。
 混合の具合についてはある程度慣れが必要ですが、多少比率が違っても硬化するので、あまり気にする事も無いでしょう。
伊−507組み立て講座15
 ひけ等も考慮してこれくらい盛っておきます。この際、周囲のディティールにかからないように注意。もし余計な所に付いた場合は、硬化前に拭き取るか、硬化後にナイフ等で削りだす事になります。削るのは非常に簡単なのですが、食い付きが良い為、少々面倒です。
伊−507組み立て講座16
 完全硬化後、紙ヤスリで削ります。(画像ではタイラーを使用)ナイフで大まかに削ってからでも良いのですが、このくらいの場合は削り過ぎるミスを考えると、そのままヤスリで仕上げて行った方が無難でしょう。
伊−507組み立て講座17
 こちらの面も削ります。ヤスリがけは600番で仕上げれば十分でしょう。
伊−507組み立て講座18
 完成。まだ細かい傷等がある場合は、瞬間接着パテかラッカーパテで処理しましょう。いずれにしても、完成すると見え難くなる部分なのであまり気にする必要は無いと思います。
 また、このパーツの付近はかなり入り込んでいる為、接着は塗装後に行った方が良いでしょう。
 以下、次回。